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2026-09-02

2026年10月、インボイス登録の一番おいしいタイミングが来る

インボイス制度消費税フリーランス税制改正

インボイス制度は2023年10月に始まって以来、免税事業者との取引にまつわる経過措置が段階的に縮小していく仕組みで動いてきました。

ただ2026年4月、令和8年度税制改正でこのスケジュールが変わっています。フリーランスとして把握しておきたい要点を整理します。

インボイス制度のおさらい

前提をざっと確認します。

消費税を納める課税事業者は、売上で預かった消費税から、仕入や経費で払った消費税を差し引いて、その差額だけを納めます。この差し引きが仕入税額控除です。

インボイス制度が始まる前は、仕入税額控除できるかどうかに取引相手が課税事業者か免税事業者かは関係ありませんでした。誰から仕入れても控除できる、というシンプルな話だったわけです。

インボイス制度後は、仕入税額控除を受けるために適格請求書(インボイス)の保存が必要になりました。インボイスを発行できるのは、税務署に登録した適格請求書発行事業者だけです。

そして免税事業者1は、そもそも適格請求書発行事業者として登録できません。つまり免税事業者への支払いは、原則として仕入税額控除が使えなくなるわけです。

免税事業者は消費税を納めなくていいので一見得なようですが、発注側からするとそう単純な話ではありません。免税事業者に払った消費税相当額は、そのままコスト増になってしまうからです。ここが今回の話の出発点です。

経過措置は2026年10月から70%に下がる

いきなり控除ゼロにすると影響が大きすぎるので、免税事業者への支払いについても一定期間・一定割合は仕入税額控除を認める、という経過措置が用意されています。

令和8年度改正前のスケジュールは、2023年10月から3年間80%控除、その後3年間50%控除、2029年10月以降は控除なし、というものでした。

これが令和8年度改正で2年延長され、下げ幅も緩やかになりました。

期間控除可能割合
2023年10月〜2026年9月(3年)80%
2026年10月〜2028年9月(2年)70%(改正前は50%)
2028年10月〜2030年9月(2年)50%
2030年10月〜2031年9月(1年)30%(新設)
2031年10月以降控除なし

つまり2026年10月1日が、最初の下げ幅(80%→70%)が実際に効いてくる節目です。免税事業者と取引を続けている発注者は、この日を境に仕入税額控除できる割合が10ポイント下がり、負担が増えます2

免税→課税転換の負担軽減:2割特例と3割特例

インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者に転換した人向けには、納税額を軽くする特例も用意されています。

2割特例は、売上に係る消費税額の20%だけを納めればいい、という軽減措置です。2023年10月〜2026年12月を含む課税期間まで使えます。

これが2026年12月で切れたあとの受け皿として、令和8年度改正で新設されたのが3割特例です。売上に係る消費税額の30%を納める形で、2027年分・2028年分の消費税申告に使えます(国税庁の解説ページを参照)。

段階期間対象
2割特例〜2026年12月個人・法人
3割特例2027〜2028年個人事業者のみ
簡易課税 or 原則課税2029年〜個人・法人

ここで一つ注意点があります。3割特例は個人事業者だけが対象で、法人は使えません。フリーランスエンジニアの多くは個人事業主のまま活動していると思いますが、法人化している人にとってはここが地味に大きい差になります。

2割特例のほうは個人・法人どちらも対象です(国税庁の概要資料)。ただし資本金1,000万円以上の新設法人は対象外になるなど、こちらにも別の除外条件があるので注意してください。

3割特例が終わったあとは、簡易課税か原則課税を選ぶことになります。

原則課税は、記事の冒頭で説明した売上で預かった消費税から、仕入・経費で実際に支払った消費税を差し引くという本来の計算方法のことです。

これに対して簡易課税は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選べる制度です。業種ごとに決まったみなし仕入率を売上にかけて仕入相当額とみなし、その差額で納税額を計算します。

フリーランスエンジニアのようなサービス業は、多くの場合第5種事業(みなし仕入率50%)に該当します。単純化すると、売上に係る消費税額の半分だけ納めればよく、消費税10%をまるごと持っていかれるわけではありません。地味にありがたいポイントです。

2026年10月が節目とされる理由

2026年10月から経過措置の控除割合が80%→70%に下がり、免税事業者と取引を続ける発注側のコストが増えます。一方で、負担の軽い2割特例が使えるのは2026年12月までで、2027年以降に転換すると3割特例(30%)に切り替わり、少し負担が重くなります。

つまり発注側が免税事業者との取引を敬遠し始めるタイミング自分が一番軽い税負担で転換できる最後のタイミングが、2026年10月〜12月に重なることになります。ここが節目と言われる理由です。

理由を整理すると、だいたい次の4つに集約されます。

制度の方向性。 令和8年度改正では、経過措置を延長しつつも控除割合は段階的に絞る方針のままで、3割特例も法人は対象外という形で導入されました。政府が課税事業者への転換を促す姿勢を崩していないのは、この辺りからも読み取れます。インボイス制度そのものが撤回されるほうに賭けて様子見する、という選択肢はどんどん薄くなってきている気がします。

発注側の動向。 東京商工リサーチが2023年9月に実施した調査では、免税事業者と「取引しない」と回答した企業が8.3%、「取引価格を引き下げる」と回答した企業が3.4%で、合わせて1割強の企業が取引の見直しを示していました(日本経済新聞)。経過措置がさらに縮む2026年10月以降、同じ傾向を強める発注者が増えても不思議ではありません。

資金繰り。 免税事業者のままだと、発注者が仕入税額控除できない分を織り込んで、取引価格そのものを下げてくることがあります。毎月の支払いから少しずつ差し引かれる、というイメージです。

課税事業者に転換すると単価の調整は避けられるうえに、消費税分をその都度差し引かれるのではなく、確定申告のタイミングでまとめて納付する形になります。月々天引きされない分、手元にお金を置いておける期間が長くなるので、資金繰りとしてはむしろ有利です。ただしその分、納税資金として使い込まずに別枠で確保しておく管理は必要になります。

補助金。 インボイス対応のための会計・受発注ソフトやハードウェア導入に、補助が上乗せされる制度もあります。たとえば「デジタル化・AI導入補助金」のインボイス枠は、補助率が最大4/5とかなり高めです(中小企業庁の概要資料)。

手続き上の注意点

制度を選ぶ側の話として、届出のタイミングにも癖があります。

簡易課税を選ぶには消費税簡易課税制度選択届出書を、適用したい課税期間が始まる前日までに提出する必要があります。2割特例・3割特例から簡易課税へ切り替えるつもりで確定申告の直前に慌てて動くと、期限切れで原則課税に回されるリスクがあります。

もう一つ、インボイス発行事業者として一度登録すると、登録日から2年を経過する日の属する課税期間の末日までは登録を取り消せません(いわゆる2年縛り)。「とりあえず登録してみて、やっぱりやめる」が効かない制度だという点は、頭に入れておいたほうがいいです。

経過措置の表を見ると、免税事業者への配慮を少しずつ削っていく設計になっているのがよくわかります。今すぐ判断を迫られるものではありませんが、2026年10月がなぜ節目として語られているのかは、把握しておいて損はないはずです。

参照

Footnotes

  1. 基準期間(個人事業者なら前々年、法人なら前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者。消費税の申告・納税義務が免除される。

  2. たとえば免税事業者への支払いが月10万円(税込)の取引なら、80%控除の期間は消費税8,000円分を控除できていたのが、70%控除になると7,000円分に減り、発注者にとっての実質コストが1,000円増える、という計算です。